事業成功の鍵は、ザラザラとした個別エピソードに宿ると思います。
僕も戦略系のコンサル会社にいたから分かるのですが、
コンサルの人は、すぐ、
- 装置産業は、規模型ビジネスである
- 従って、規模さえ増やせば、
- ラーニングカーブも効いて単位当たりの製造費が安くなるし
- 調達量が多くなることのボリュームメリットにより材料費は安くなる
- そのため、儲かる!以上
みたいなロジックで規模型ビジネスを語ったりするんだよね(悪い意味ではなくて)。
いわゆる、事業成功の鍵(Key success factor)ってやつ。
確かに、大きく捉えるとたぶん合ってるんだと思う。
だけど、実際に、じゃあ、「運用できますか?」というと違うと思うんだよね。
製造拠点の規模を大きくすれば、規模を大きくしたなりの苦労があるわけです。例えば、人は本当に増やさないでよいのか?業務は変わらないのか? とかね。調達だってさ、仕入先との交渉次第なわけです。
企画するだけ/実際にやってみる は雲泥の差があって、企画の段階で思ったような結果が出ないことは多いんだよね。僕も、コンサルから転職したての時に、「あとは運用するだけですね」と軽はずみに言ったら、運用の人に「運用もルーチンじゃないから」といわれてしまったことがあるけど、まさにそうだと思う。
結局、本当の意味で、規模型ビジネスとして、利益率を改善できたとすると、偉そうなコンサル先生が規模型ビジネスと判定して、製造コスト・調達コストの低減の方向性・マックスのポテンシャルを示してくれたことがありがたいわけではなく、
- 調達コストを安くするために、どんな相見積もりをして、過去の経緯があったサプライヤーをどうやって切ったのか/あるいは切らずにできたのか
- 製造コストを低減するために、シフトをどう組んだのか、教育をどう実施したのか
といった、個別のエピソードが本当に肝なんだと思う。それは、事業によっても、担当した従業員によっても全然違ったエピソードになるはずなんだよね。
だから、成功の鍵が上記に書いたような「装置産業全般に当てはまる、まるっとした、つるつるとしたロジック」で以上終了ってなんだか寂しいし、浅いと思うんだ。その事業が成功したとするなら、その成功の鍵というのは、生々しい・ざらざらとしたエピソードに宿るんじゃないかな。