右、斜め45度

右斜め45度は、「Done is better than perfect!」の日本語訳のつもり。進んでいれば良しとする精神を大事にしたい。

歴史はこうやって教えて欲しかった!良質なミステリーのような本「世界システム論講義」

この本の基本スタンスは「勤勉だったから先進国になれて、怠惰だったから後進国で居続けたのだ」という西洋主義的な論を否定し「先進国が先進国たるために、周辺に位置する国を発達させない仕組みを作った」という主義を取る。

話は長いので、最も面白い部分だけ、サマリーを作る。世界の覇権を握ったオランダ、イギリス、アメリカにおいて、覇権を握れた理由・仕組みを述べる。一つ、面白い法則として、覇権は、生産→商業→金融の順で握られる。崩れる時もこの順番。イギリスも、まず賃金の安い地域と消費地を繋げるハブとなり、ありモノを安く提供する価値から作る。次第に商業が発展し独自の文化が生まれる。そして独自の文化を輸出していく。また、その貿易ネットワークに自分の産業を乗っけられたからこそ産業革命が起きたというのも面白い。

  • オランダ
    • コロンブスの航海以後、スペインが植民地を拡大。現地人を使って、サトウキビや銀山などの「世界商品の生産」を行うエンコミンダを実施。しかし現地人を十分に飼いならせず、かつ、自国からするとコントロールしにくく、次第に下火になった。ただし、スペイン王(カール5世)は、神聖ローマ皇帝の座を争ったフランス王(フランソワ1世)と争いを続け、没落していった。
    • その後、オランダが覇権を握れたのは、造船技術が強く、大量の積荷を安価で運ぶことができたため。せかいじゅうのものがアムステルダムに集まると、そこで商業が発達し、文化が発達し、金融が発達する。ただし、生活水準が発達すれば、賃金があがり、生産面から競争力を失っていく。
  • イギリス
    • 16世紀末、農業中心だったイギリスは、人口増加するものの国土が広がらなかったため、物価上昇を引き起こした。そこで真っ先に打ち出したのが植民地拡大だ。オランダの資金が圧倒的にフランスではなくイギリスに流れたため、フランスとの戦争に勝ち、その権利を得た。
    • アフリカの黒人をアメリカやカリブに送り、そこで砂糖・お茶を作りイギリスに運ぶ。イギリスから、砂糖やお茶が再輸出される。こうして、世界システムを相手にした商業革命が起きる。同時にノーフォーク農法という農業革命を反映した穀物も輸出された。コーヒーハウスなど嗜好品が集まる場所や、ティータイムという文化が生まれた。生活革命である。
      • 「われわれイギリス人は、地球の東端から持ち込まれた茶に、西の端のカリブから持ち込まれた砂糖をいれて飲むとしても、なお、国産のビールより安く飲めるのだ。(イギリス以外は、イギリスから再輸出されるため、法外な値段がかかってしまう)」
      • カリブ海の砂糖王と、バージニアなどのタバコ貴族。カリブ海で成功したプランタープランターを現場に任せ、イギリスに移住する不在化が進行。社会資本は一向に整備されないで貧しいまま、モノカルチャー化が進む。ただし、英語やヨーロッパ文化に影響を受けない形で、レゲエなどの独自文化がうまれた。一方で、バージニアプランターは不在化するほどは儲からないため不在化できず、結果として、自分たちが住みやすいように、現地の学校や上下水道などの社会基盤が整備する。
    • 生活水準があがったイギリス人に不可欠な綿織物が、関税がかかる輸入品から国内品に代替されていった。これが、綿織物工業から産業革命がおきた理由。幼弱な綿織物工業でも、早くから、国外市場を得られやすい環境があったことは大きい。
      • 他方、戦いに負けたフランスでは市民革命が起きた。近代西洋文明の真髄ともいえる、基本的人権の思想や自由・平等といった概念だが、実は、成人男性の人権を尊重することで、逆に、女性や高齢者を差別する方向で進んだ。結果として、労働コストが安くなった。つまり、イギリスが担った世界の商業化、すなわち地球上の全地域を世界システムに組み込むという使命を、フランス革命の論理が支えたのだ。