右、斜め45度

右斜め45度は、「Done is better than perfect!」の日本語訳のつもり。進んでいれば良しとする精神を大事にしたい。

紀伊國屋札幌本店を見て、書店の未来を考えてみる

札幌・旭川の書店往訪を経て、書店の空間づくりの奥深さを感じました。
今日は、紀伊國屋札幌本店を見て感じたことを少し。


書店来るお客様には、「目的買い顧客」と「ぶらり買い顧客」が居ます。
当然、書店に来る客層の比率によってその設計は変えるべきですが、書店の入口は、ぶらり買い顧客がブラブラし、目的買い顧客はそのゾーンを見つつも目的のゾーン(奥)に行くと言うような流れを作り出すのがセオリーです。

紀伊國屋札幌本店は、全体感として、入口から入った中央のゾーンは棚が低く、奥の壁沿いに高い棚(目的買い向け)を配置してます。中央のゾーンは、スペースも多く、開放的な印象を受けます。



個別に写真で見ていきますね。
入口近くは、クネクネした棚で動きを付けたり、斜めに並べたりして、視線を引き寄せる仕掛けをしてます。




次に、奥の壁沿いの目的買い向けゾーンです。
面陳はせず、びっしり並べるというわけですね。二つ目の写真は、刑法等、専門家しか買わない相当マニアックな本です。


全体の感想としては、紀伊國屋札幌店は、ぶらり買い顧客にも、相当マニアックな目的買い顧客にも対応できる書店になってるなぁというものです。このような品ぞろえを、良い立地で出来れば、そりゃ、良いに越したことはないのですが、得てして、何かを取ったら何かがなくなるわけです。

その際に、リアル書店は何に最後まで固執すべきか? を考える必要があります。

まず、競争優位性の観点から。
一番のライバルとして、ネット書店があると思います。
では、ネット書店に勝てる要素は何か?

それは、偶然良い本に出会える楽しさに尽きるかと思います。
絶対必要な本を目的買いしたり、芥川賞を取った本を買うなら、ネット書店が便利です
でも、2010年あたりに出た、埋もれてしまっている本に出会うなら、圧倒的にリアル書店です。


次にケイパビリティの観点から。
書店のケイパビリティとしては、「ぶらりと立ち寄る客の多い立地」「広大なスペース」があると思います。
その二つを満たす、上記のような紀伊國屋書店札幌本店のようなあれば、なんでもできます。
でも、双方がない場合は、どちらを重きを置くべきでしょうか。

県に一つは広大なスペースを持つ何でも品ぞろえのある店舗を持ち、それ以上多く出店するなら、ぶらりと立ち寄る客の多い立地(抜群に良い立地じゃなくてよい)を優先した中規模店舗をいくつか作る、そして余りの資金があるなら、更に、駅中のとても交通量の多い立地に超小規模店舗をガンガン作る というのが良いと思ってます。

広大なスペースを持つ何でも品ぞろえのある店舗というのは、休日にワザワザ行く書店です。
そのような書店が何個もあると、逆にカニバリゼーションを起こしてしまうというわけです。

それ以上の出店は、中規模店舗や駅中の超小規模店舗を作っていくという流れかなと。前者は埋もれてしまった本に出会えるショールーム的な位置づけであり、後者は超売れ筋や雑誌を漏れなくチェックするための場所という位置づけです。


いずれにせよ、書店の出店に際し、どのような立地に、どのような規模のお店を作り、どのような品ぞろえにするかについては、競合の状況やその立地に来る顧客の特性を見て、柔軟に変えていかないと立ち行かなくなっていることは間違いないと思います。