世の中の変化がより急激に、そしてより大きくなってきていると感じるあなたへ『つながりすぎた世界 −インターネットが広げる思考感染にどう立ち向かうか』ウィリアムHダビドゥ
- 作者: ウィリアム・H・ダビドウ,酒井泰介
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2012/04/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本のキーワードは、「過剰結合」と「正のフィードバック」。
この二つにより、世界は不安定になった と著者は説いている。
まず、本のはじめに、19世紀で鉄道が発明されたことによる変化をインターネットの変化とダブらせている所は秀逸だ。
これまでは、牧場で育てられた牛はカウボーイに追い立てられながら、終着駅に運ばれる。そして、貨車に載せられ、中西部や東部へ出荷されていくのだが、輸送中に牛の肉は削げ落ちてしまうし、病気にかかったり死んでしまったりする牛も少なくなかった。おまけに牛を解体して出てくる内臓には殆ど値が付かない。
そこで、スイフトは冷蔵貨車を発明し、そこに食肉処理した牛をぶら下げて輸送することにした。この方法なら、はるかに多くの肉を運べるし、市場で値が付く精肉の部分だけを出荷すればよい。
このように、効率的に食肉を輸送する汽車が考案されたことで、彼らは1500キロ以上も離れた中西部のライバルとの競争にさらされたのだ。シカゴから東部まで生きた牛を運べば輸送費も嵩む。そこで東部の食肉処理業者の多くは、自前で牛を解体するのをやめ、スイフトから枝肉を購入してステーキ肉にカットしたりローストしたりする加工業者へと鞍替えした。
インターネットにより旅行代理店業の重要度が低くなったのは、同様の現象と言える。
世界が急激に世界が近くなった(=繋がりすぎになった)状態を「過剰結合」と呼んでいる。
過剰結合が、予想外の相互作用が増え、正のフィードバック(刺激を増幅する方向に持っていく)が生まれる可能性が高くなる。
この状態について、ペロー氏は以下のようにいっている。
「本当の問題は結合性だろうか、それとも規制がないことだろうか。
あらゆることが強く結びついている状態が問題なのか、それとも変化の速度が高まっていることが問題なのか。もし、政府がもっと早く対処できていたら、結合性の問題は必ずしも致命傷にならなかったと私はおもうがね。」「時間的重圧がつのると、さらに強い正のフィードバックが生まれ、すると予測が難しくなり、行動は不安定になり、予想外の相互作用が生じる可能性が増す」
サブプライム問題は、元を正せば、インターネットがもたらした過剰結合性により、いくつもの正のフィードバックが結びついて起こってしまったと考えられる。
- 債権証券化により、各案件毎のリスクは減り、「投資される物件が増える」
- 不動産の鑑定は、インターネットにより前例見習い型になった
- アジアへの製造移転が進み、アジア人は貯蓄欲が高いので、「投資可能な金が増える」
- アジアへの製造移転が進んだのは、インターネットにより国境を越えた情報共有が容易になったため
- 投資銀行の貸出先にはヘッジファンドを含めており、彼らがCDOを買い込むことで価格を吊り上げていた。
- 投資銀行の人員は、「業績連動給」というエサで、更に正のフィードバックが掛かっていた
正直、この本は纏まりが弱く、読みにくい。
だが、とても重要な論点に触れているし、同様のテーマを扱った他の本も読みたいと思う。
今年の気になるテーマは、「パーソナライズ」「過剰結合・正のフィードバック」で決まりな気がする。