元ボスコン日本代表の内田和成おすすめ!企業変革を考える上で沢山のヒントあり『パラダイムの魔力−成功を約束する創造的未来の発見法』ジョエル・パーカー
元ボスコン日本代表の内田和成のブログに「コンサルタントになるための20冊」というカテゴリがあって、その中の1冊目がこの本。
- 作者: ジョエルバーカー,内田和成(序文),仁平和夫
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 1995/04/11
- メディア: 単行本
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たぶん、一冊目にあげたってことは彼の中でベストな本なんじゃないかなぁ。
本全体の趣旨は、内田氏が要約した通りだと思う。
私なりに中身を要約すれば、同じパラダイムでも善玉の時は仕事に大変役に立つが、いったん環境に合わなくなると変革のじゃまをする悪玉になる。パラダイムチェンジを行うには、パラダイムシフトを発見する人と推進する人の両者が必要である。
少し、細かく本の内容に触れたいと思う。
まず、パラダイムとは?
- 世界を説明し、世界の動きを予測するための、共有された一連の仮説(by アダムスミス)
- 現実のある見方に基づいて、認識し、考え、評価し、行動する基本的な方法(by ウィルス・ハーモン)
- ルールと規範であり、境界を明確にし、成功するために境界内でどう行動すればよいかを教えてくれるもの(by 筆者)
パラダイムとは世界を理解するための枠組みそのものである。このパラダイムのお陰で、効率的に物事を進められる。
次に、新しいパラダイムはいつ現れるのか?
- 新しいパラダイムは、必要とされる前(現行のパラダイムでは解決できる問題がなくなる)から現れている。それは、現行パラダイムで解決できない問題がきっかけとなり生まれるが、「ツールやテクノロジー不足」や「パラダイムが問題を解決するのはまだ力不足」であるために、アンダーグラウンドに留まっている。
誰が、新しいパラダイムを見つけるのか?
- 現行のパラダイムについて無知な人
- 研修を終えたばかりの新人
- 違う分野から来た経験豊富な人
これに関連して、面白い話が載っていた。
GEでは、電球部門に新しく入ってくるエンジニアに一種のしごきをしていたそうだ。新人は仕事を始めるまえにまず部長と面接する。部長はそのとき、電球をつけ、新人の目の前にかざしてこういう。「電球の中に、赤くなっているところがあるだろう。君の仕事は、証明が滑らかになり、電球の表面全体がむらなく輝くような新しいコーティング方法を開発することだ」与えられた任務ははっきりしているが、それを誰もができないことは知っていた。数週間苦闘を続けたあと、新人は敗北を認めると、先輩たちはうれしく笑う。だが、1952年に新入りのエンジニアが部長のところにやってきて、電球をソケットにさしこみ、スイッチをひねった。「これでいいんでしょうか」 このとき、新人いじめは終わった。
マリオネットホテルでは、新人の研修生を集めて、こう言ったというのだ。「みなさんは、私の新しい目であり耳なのです。今後数週間、このホテルの中の奇妙に思えることを探してください。そしてどうすれば改善できるのか考えてください。」その後6ヶ月で得られたすばらしいヒントは、それまでの6年間より多かったという。
- 現行のパラダイムを知っているけど、それにとらわれていないヒト(一匹狼)
- よろずいじくりまわし屋
このよろずいじくりまわし屋に関しても面白い話が載っている。
市内に電話が普及するにつれて、商売が思わしくなくなっていた。それまでは市内でおこなわれる葬儀の半分以上を扱っていたのに、だんだん注文が入らなくなってきたからだ。
原因は、オペレーターを研修するヘッドオペレーターがライバルの葬儀屋の妻であった。葬儀屋につないでくれと掛かってきたら、必ず夫の会社につなぐよう仕込んでいたのだ。仕方なく引き下がったが、原因がどこにあるかははっきりした。オペレーターを通さずに直接自分のところに電話が掛かってくる方法を考えなければならない。1888年、ストロージャーは自動交換機と回転式ダイヤルの特許をとった。
そして、誰がパラダイムを開拓するのか?
パラダイムシフターが発見した未開の道を、まっさきに突き進むのがパラダイムの開拓者である。新しいパラダイムをいちはやく取り入れるヒトは「直感的判断」が欠かせない。
開拓者は、新しいパラダイムの不思議な魅力にひかれ、問題を解決できそうだという美しい幻影に惹かれて決断するのであって問題解決の実績に基づいて決断するのではない。
圧倒的な優位に立つためには、パラダイムシフターになる必要はない。パラダイムの開拓者になれば十分である。パラダイムの開拓者として、アイデアを商品化するのが得意だったのは、日本である と筆者は言っている。
パラダイムシフトはその渦中にいる人にどんな影響を与えるか?
わたしたちが何を知覚するかは、自分のパラダイムによって決定されるといえる。つまり、今のパラダイムで理解できないものは、見えないし何も聞こえない。
このパラダイム効果を証明するような、専門家の予言の過ちは、数多い。
・蓄音機に、商業的な価値は全くない(トーマスエジソン 1880年)
・人類が原子力を利用できるようになる可能性はまったくない(ノーベル物理学者 1920年)
・世界で、コンピューターの需要は五台くらい(IBM会長 1943年)
また、次の話も面白い。まさに、自分のパラダイムに囚われる一例だろう。
スキューバダイビングをしていて、水深50メートルのところで、バドワイザーの空き缶をみつけたとき、その赤いラベルが鮮明に見えた。その人は不思議に思った。というのも、光スペクトルの赤色は水深50メートルも通過しない。見えるはずのない赤が見えたのである。バドワイザーの缶ビールが赤いことを「知っていたからそのように見えた」のである
最後に、こちら。パラダイムが役にたたなくなると逆に足かせになる という一例。
実験者がチェスをはじめ、途中でやめる。その盤をチェスの世界ランカーと初心者に5秒間だけみせた。その後、いま見たとおりにコマを並べてくださいといった。名人の成績は81%の再現率。一方で、初心者は33%。ところが、、、、チェスの盤の配置をコンピュータによってランダムに並べると、初心者より成績が低くなってしまったのだ。チェスのパラダイムが取り除かれたため、その認知力が役立たないばかりか、混乱するだけになってしまったのだ。
現行パラダイムの限界を理解し、新しいパラダイムの可能性を模索するには、様々な人の意見を聞いて自分の常識を壊し続ける という過酷な試練が必要だろう。コンサルタントを雇っても、その声に耳を傾けないと意味はない というわけだね。