右、斜め45度

右斜め45度は、「Done is better than perfect!」の日本語訳のつもり。進んでいれば良しとする精神を大事にしたい。

楽天レシピはインセンティブをつけてもうまく行かない一方で、Naverまとめはインセンティブでうまく行ってるのは何故か?

今日は、オンラインワークショップで出たネタを、自分なりに膨らませてみることにします。
オンラインワークショップ

毎回、毎回、このメルマガは、良い問題が出題される。そろそろ、僕も出題に貢献しなければと思ってます(汗)。

さて、今回のお題は、

NAVERまとめ」が好調だそうです。同サービスは「まとめ」と呼ばれるコンテンツを作成したユーザー(キュレーター)に対して報酬を支払うことで、大量のコンテンツを生成しています。
一方で「クックパッド」に対抗してオープンした「楽天レシピ」はレシピの投稿に報酬を支払っているにもかかわらず苦戦しています(クックパッドは無報酬)。

CGMサービスの促進策として、インセンティブを用意することはわりと一般的ではありますが、なぜ「楽天レシピ」は苦戦していて、「NAVERまとめ」はうまくいっているのでしょうか。

以下の記事を読んでから答えてください。

http://hiromikubota.tumblr.com/post/12920370524/the-reason-rakuten-recipe-cant
http://hiromikubota.tumblr.com/post/22746673061/naver-matome-study

僕は、楽天レシピはなぜクックパッドに勝てないのか?は読んだことがあって、とても頷いたのを覚えてます。

主な主張をピックアップすると以下の通り。

もともとレシピの投稿は工夫のしどころが多い創造性の高い作業です。「どうやったら、おいしくなるのかな」「調味料の分量を変えてみるか」「こうしたらもっと時間短縮になるかもしれない」など、人によってはたのしい時間になるものだと思います。そうして考案したレシピをサイトにのせると、他のユーザーから「つくってみました」という報告がくるように楽天レシピ・クックパッドともにできています。そうした他のユーザーからのフィードバックは素直にうれしいものです。行動経済学者の言葉を借りれば社会規範に基づくインセンティブがうまく機能しています。

ところが、楽天レシピはそこに「楽天スーパーポイント」という市場規範に基づくインセンティブが用意されています。「レシピ投稿は50ポイント、つくったよレポートはレシピ投稿者とレポート投稿者の双方に10ポイントが付与される仕組み」です。多くの心理学者や行動経済学者が実験で証明しているとおり、報酬が金銭的インセンティブに変わると、「たのしみ」でしていた作業は「報酬をもらうため」という別の動機づけに置き換えられてしまい、とたんに「たのしくなくなる」のです。


やるだけで楽しかったのに、金銭的メリットが付くと、かえって「冷めてしまう」という現象ですね。


これを読んだとき、予想通りに不合理のあるエピソードを思い出しました。

予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版

予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版

妻の実家に招待され、美味しい食事とワインを楽しんだ。
とっても楽しかったので、帰りがけにこういった
「今日のお代はいくらですか?」
大喧嘩になった


そう、社会規範に基づいた行動に、市場規範を持ち込むとエライことになるという事例です。(上記の例で言えば、「そういうつもりで、おもてなしをしたわけじゃない!私の気持ちを踏みにじる気か!」というわけですね)



では、Naverまとめは、インセンティブを支払っているのに、何故うまく行っているのか?というのが問題となります。

まず考えられるのが以下の主張。

楽天レシピはクックパッドが居るため相対的にうまくいってないように見える一方で、Naverまとめは、そもそも比較対象がないためうまくいってるように見えるだけ

この主張は、しごく正しいと思う。Naverまとめがうまくいってるといっても、まだ知名度クックパッドに及ばないし、一般大衆の中で使い方も定まっていないからだ。でもこれだけでは語り尽くせないと思います。で、僕の主張は以下の通り。


「まとめ作成」と「レシピ作成」という作業の違い

まとめ作成は「事実の整理(左脳的)」が多い一方で、レシピ作成は前述にもあるように「主観・主張を披露する場(右脳的)」が多いといえると思います。
 ※もちろん、主観・主張を披露するまとめもあると思うが、「大半は事実の整理」と言えるのではと思ってます


するとどうなるか?


「事実の整理」には、「より正確な事実があれば、それに上書かれる」

一方で、

「主観・主張を披露する場」には、「僕も、試してみました」「私は、少しアレンジしました」と「主観・主張が上乗せられていく」

ことになります。

つまり、主観・主張を披露する場のほうが、圧倒的に「他者と触れ合う機会が多くなり、広がりが大きい。」ということになる。そして、そのこと自体が楽しいということになるのです。


つまり、事実の整理より、主観・主張を披露する場のほうが、社会規範(その場を規律するもの)が働きやすく、それを金銭的インセンティブで煽ること自体がナンセンスと捉えられるわけです。


僕の、いまのところの解は、まとめ作業が金銭的インセンティブが働きやすいというよりは、レシピのようなものが金銭的インセンティブがマイナスに働くことが多いため、楽天レシピはインセンティブをつけてもうまく行かない一方で、Naverまとめはインセンティブでうまく行ってるのだろう と思います。