インフルエンサーの重要度を過度に見積もりすぎていることへの警告を鳴らす良書『ウェブはグループで進化する』ポール・アダムス
マルコム・グラッドウェルが提唱する少数者の法則(ごくわずかに存在する大きな影響力を持つ人物に接触して彼らの考えを変えることが出来れば、何百人・何千人・時には何万人という単位で他の人にも影響を与えることが出来るというもの)に、過去10年、マーケティング業界は翻弄されてきたといってよいだろう。
この本は、Google+やFacebookのビックデータを実際に分析してきた筆者により、少数のインフルエンサーではなく、無数のグループ、及び、そこで共有される声こそが重要であると説いている。
- 作者: ポール・アダムス,小林啓倫
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/07/26
- メディア: 単行本
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まず、グループの定義が為されている。人は平均で4〜6のグループに属しており、それぞれのメンバーは10人に満たないことが多い。メンバー数の平均は4人としている。
- 最も親しい人のグループには、5人ぐらいの人物が存在。
- 次に親しい人々のグループには、15人ぐらいの人物が存在。
- 定期的に会う機会のある人々は50人ぐらい。彼らの近況もわかっている。
- 安定的な関係を築くことができるのは、150人ぐらいが限界。
- 何となく知っていて名前も分かるというような「弱い絆」でつながっているのは、だいたい500人。
また、世の中がなんて狭いんだ!という例で良く用いられる「六次の隔たり」についても、6人で繋がってはいるものの影響を受けるのは3人(つまり、友達の友達の友達)まで、と過度に世界が狭いと思うことへの警鐘を鳴らしている。ミルグラムは分かってたんだなぁ。。。
5人の仲介者がいるというのは、出発点と到達点の間には、大きな心理的な距離が存在すると言うことを意味する。単に5人の人間が存在すると考えるのではなく、5つの集団、あるいは5つの構造物によって隔てられていると考えるべきだ。 スタンレーミルグラム
では、いよいよ本題。そのような無数のグループがある中で、情報の拡散はどのように起きるのか。
まず、何かが起きたときは、イノベーターハブが反応し、周囲に居る限られた数の人々へと伝える。周囲に居る一人がフォロワーハブだ。彼らは、新しい発想を受け入れるのに時間が掛かる。しかしながら、より多くの人々と繋がっている彼らの存在は、マス市場に到達するためには重要なのだ。
筆者の次の言葉はとても魅力的だ。みんな、誰かのインフルエンサーだ ということだ。
新しい発想が広範囲にいきわたる際に、たいていの場合、その出発点となるのは普通の人物であり、いわゆる「インフルエンサー」と呼ばれるような性質を持つ人物ではない。ネットワークの構造(一般人のイノベーターハブがフォロワー・ハブとその他の影響されやすい人々と結びついていると言う構造)を理解することが、インフルエンサーなどという特別な人物を見つけようとするより重要である。