ありえない設定の漫画(出落ち系漫画)が増えてきた理由
最近の漫画で面白いと思うものに共通するのは、
- 舞台は現代の日本(あるいは史実どおり)なんだけど
- どこか一箇所だけ、ありえない設定がある
という点だと思ってます。
ちょっと前の作品だと、菌が見える「もやしもん」や、人々がゾンビ化してしまう「アイアムアヒーロー」などです。ちなみに、男女が逆転してしまう「大奥」も男女逆転という部分以外は史実ということを考えるとこの部類に入るかと思います。
いまのジャンプ・マガジンでハマってるのが以下の3つ
- 何故か主人公だけクラスのヒロインである我妻さんと結婚している未来にタイムスリップできてしまう「我妻さんは俺のヨメ」
- 未知の生物である殺センセーを暗殺しようとする日々を描く「暗殺教室」
- どんな能力でも使えてしまうが無気力な斉木君の日々を描く「斉木楠雄のΨ難」
このような出落ち系漫画って、これまでの漫画とは異なる特徴があると思ってます。
「幽々白書」「ドラゴンボール」「ワンピース」といった、いわゆる典型的な冒険モノは、大きなストーリーの流れ(主人公たちの目的のようなもの)があって、例えば、ワンピースで言えばグランドラインを見つける的な、その過程での困難を乗り越えるという構造です。
従って、
- 目的を達成してしまうとストーリーが続けにくくなる
- 目的を先送りすると、ストーリーがだれる&敵・主人公の能力がインフレーション化してしまう
という欠点があります。
従って、目的達成までの過程・キャラクターを如何に愛してもらえるかがキーとなります。(ドラゴンボールなんて、もはや、ドラゴンボールはどうでも良くなるわけで・・・)
翻って、出落ち系漫画はというと、
- そもそも、目的がないので、ストーリーはブレない
- ありえない設定×日常の出来事が、全て面白い話になる
という特徴を持っており、長く続けられる安定感はあると思います。
例えば、我妻さんは俺のヨメで言えば、体育祭・バレンタインデー・クリスマスなどなどのイベントが、タイムスリップ後(未来)の我妻さんとの掛けあい&いまのギャップで、全てが面白い話になりえるわけです。
また、一方で
- 秘密の核心に触れるようなストーリーを2、3話入れれば、いつでも終われる
という特徴も持ってるかと思います。
例えば、斉木楠雄のΨ難で言えば、見るからに超能力の源泉っぽい斉木君の頭のピコピコを取ったという10月第3週のジャンプのストーリーはキーストーリーになってもよいわけです。
では何故このような漫画が多く出てきたのか。
この10年でのジャンプ・マガジンと言った少年誌の売上は急落傾向にあります。大きな要因はipod、スマートフォン、携帯ゲーム機などの暇つぶしツールの台頭でしょうね。
『週刊少年ジャンプ』年間発行部数の推移(1982年〜2008年) - 本読みのスキャット!
で、この状況に対して、短期間でクライマックスを迎えさせたい&反応が悪ければすぐ打ち切りたい/よければ一定のペースで続けたいという漫画が重宝されたのでしょう。
当然の補足をしますが、今回上げた「我妻さんは俺のヨメ」「暗殺教室」「斉木楠雄のΨ難」は、反応が良かったので続いてるに過ぎず、この裏でたくさんの面白くないので打ち切られる漫画があるわけです(例えば、共同生活で結婚相手を見つけなければいけない「ハッピープロジェクト」とかね)。なので、一概に、この出落ち系漫画=売れる構造というわけではないです。
ちょっと残念なのは、もしこういった理由から出落ち系が増えてるとすると、壮大な冒険モノがあまり見られなくなりそうだなぁ・・・ということですね。それはそれで頑張ってほしいものです。